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食の文化遺産4

《 登録まで》

2010年にユネスコ無形文化遺産として、「メキシコの伝統料理」、「フランスの美食術」、「地中海の食事」が登録されました。これをきっかけに農林水産省をはじめとして学界や料理関係者により、日本食の文化遺産登録を目指す検討会が作られました。また、登録推進のため『和食文化国民会議』(略称「和食会議」)の前身となる団体も設立されました。


そして、2013年に「和食;日本人の伝統的食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。上記以外にも、「日本料理アカデミー」も大きな力を発揮しました。2004年「日本料理の世界的促進」と「次代の日本料理の貢献」などをテーマに作られた民間団体です。海外の調理人との交流をはじめとして、小学校で出汁の味を教える出張授業を度々行うなど、息の長い活動で、和食への理解を今も広く呼びかけています。

大根を干す風景
タクアン用の大根を干す

《 和食 日本人の伝統的食文化 》

馴染みすぎていて逆に分かりにくいのですが、登録にあたってこのように定義されています。
「和食」とは料理だけでなく、「自然を尊ぶ」という日本人の精神に基づいた「食」に関する「習わし」と位置づけられ、ご飯を中心とする食文化のことを指します。その特徴として、以下の4点が挙げられています。

◎ 多様で新鮮な食材とその素材の味の活用
国土が南北に長く、自然が多様で豊かです。
そして、その地域の食材の味わいを活かす調理技術や道具が発達しています。         
調理を学ぶとき、「旬」や「素材の味」はまず押さえるべき基本です。


◎ 栄養バランスに優れた健康的な食生活
ご飯・汁・お菜・漬物を基本とした食事スタイルは、栄養のバランスがとりやすい。
また、だしの「うまみ」や豊かな発酵食品により動物性油脂が少なくてすみ、日本人の肥満防止や長寿に役立っているとされます。

ところで、1977年、アメリカでマクガバンレポートと呼ばれる「米国人の食生活指針」という報告書が出されました。肥満に悩むアメリカが理想とすべき脂肪と炭水化物の摂取比率は、その当時の日本人の食生活に似たバランスでした。このことが徐々にアメリカにも知られるようになり、1980年以降の和食ブームにつながりました。(が、この後日本では食の欧米化が進み、脂肪の取りすぎが進行しています)


◎ 自然の美しさや季節の移ろいの表現
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現します。
季節の葉や花のあしらいや、調度や器を楽しみます。

例えば、お茶を飲むのでも、夏は磁器やガラス、冬は陶器がしっくりします。
このような感覚は、磁器・ガラス・陶器・漆器・金属器など多様な器を、季節に合わせて使いこなし磨かれてきました。


◎ 正月などの年中行事との密接な関わり
日本の食文化は、年中行事と密接にかかわって育まれてきました。
自然の恵みである「食」を分け合い食の時間を共にすることで、家族や地域との伴を深めてきました。

次世代に、食文化とともにその地域の伝統的慣習や文化を伝えていったのです。 

秋の和食
あれこれ秋の味

《 ベストな状態 》 

ところで、日本の食生活がベストであったのは、昭和50年(1975年)頃だとされています。それ以前は炭水化物過剰でやや栄養不足で、それ以降は脂質の取りすぎで生活習慣病などが起きやすくなっています。当時は食事のバランスが良かったことに加えて、味噌汁やたくあんなどの発酵食品の摂取も多かったのです。

ちなみに、昭和50年ころは第二次ベビーブームで、「♪港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が流行っていました。

 

☆ 次回は、和食の衰退やその取り組みについて考えます。

                          2015.11.10